出生前の脳の発達中における、ビタミンD摂取状態が、小児期の注意欠陥および多動性障害症状(ADHD)のリスクに影響を与える可能性があると、最近2つの研究が発表された。
オーストラリアとニュージーランドの精神医学ジャーナル(Journal of Psychiatry)に発表された最初の研究は、より高いさい帯血中のビタミンDレベルと、幼児期に見られるADHD症状のリスク減少に、関連性があることが示された。
研究対象は、デンマークの集団研究1,233人のメンバーを含む、出生から18歳の誕生日までの子供とその母親2,500人を追跡調査したものである。 この研究では、出生時のさい帯血中のビタミンDレベルを測定し、平均年齢で2.7歳時における、子供の行動を分析した。
ビタミンDを摂取し、さい帯血中のビタミンD濃度が少なくとも25 nmol / L(10 ng / ml)であった母親からは、ADHDスコアが低い子供が産まれた。さい帯血中ビタミンDレベルの10 nmol / L(4 ng / ml)増加ごとに、ADHD症状スケールの上位10%グループに入る可能性は11%減少した。
これらの結果は、疫学誌(the journal Epidemiology)において、2015年に発表された別の研究での結論でも支持されている。
その研究では、スペインの1,650人による、母親と子供のペアが含まれ、妊娠中のビタミンDレベルが高い母親から生まれた子供ほど、ADHDの症状スケールが低いスコアであることが示されている。
母体血液を妊娠13週目に採取し、ビタミンD含有量について分析。規格化された分析試験を用いて、4〜5歳の子供に対しADHD様症状を評価した。
判断を惑わす要因を調整した結果、母体ビタミンD濃度が25 nmol / L(10 ng / ml)増加するごとに、ADHD様症状の合計数が11%減少することがわかった。
これらの研究の結果は、妊娠中の母親の循環血中ビタミンD濃度が高いほど、小児期にADHD様症状を発症するリスクが低いことを示しており、出生前ビタミンDの保護効果が示唆されている。
翻訳:藤田幸三