不妊の三大原因(因子)について、
一般社団法人日本生殖医学会は
①排卵因子
②卵管因子
③男性不妊因子
と発表しています。
今回は、排卵因子について紹介します。
排卵因子とは
排卵因子の代表例として、
●排卵障害
●卵巣機能低下
●多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群
●黄体機能不全
を挙げることができます。
排卵障害とは
排卵障害とは、
・排卵させるまでの過程に異常で卵が育たないこと
・卵が育ってもうまく排卵できないこと
を指します。
排卵障害があるかどうかは、
病院に行かなくても基礎体温表を見ればわかります。
基礎体温は、
低温期と高温期の二相になり、
それが一定のサイクルで繰り返されていきます。
生理が始まって排卵前までは、
卵胞刺激ホルモン(FSH)の影響で体温は下がります。
その後、
黄体化ホルモン(LH)が分泌され、排卵が起こります。
排卵を境に体温は上昇し、基礎体温は2相になります。
基礎体温の変化は、
身体の状態を知る大きな手がかりとなります。
排卵障害がある場合は、
生理が来て次の生理までの基礎体温表が排卵日を境に2相になりません。
特に妊活中の方は、
基礎体温が2相でない場合、
血液検査でホルモンの数値を測り、
超音波検査で卵巣の状態を見て、
原因を見つけることをお勧めします。
排卵因子による排卵障害の原因は、
ホルモンバランスの崩れと一言で説明されることもあります。
しかし、その他、
・卵巣機能低下
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
・黄体機能不全
などがあります。
卵巣機能低下とは
卵巣機能低下とは、
・卵胞が育たない
・卵胞がない
など、
卵巣が反応しない状態のことを言います。
つまり、
視床下部や下垂体から卵胞刺激ホルモンを通して、卵巣に「卵胞が卵子に育つよう」命令が出ているにもかかわらず、反応することができません。
これは、
卵巣の中にある原始卵胞の減少から起こる症状です。
AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査とは
AMH検査によって、
卵巣の中にどれだけ卵子が残っているか(原始始卵胞のおおまかな数)を知ることができます。
ご自身の卵子の状態や卵巣年齢を知るには、良い検査です。
AMH検査について
実は、
AMHは年齢と相関しません。
そして、『妊娠率』とも相関しません。
AMH値が低くても、妊娠される方がたくさんいます。
一方で、
AMH値が高すぎる場合は、
多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群が疑われる場合もあります。
最近では、
『早発卵巣不全』(20〜30代で卵子がなくなること)も見られます。
AMHにおいて、基準値や正常値を設定することはできません。
もちろん、
AMH値は年齢とともに低下します。
だからこそ、
結果を客観的に受け止め、
治療の必要がある場合は、早めに対応することが大切だと考えます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、
卵巣内にたくさんの未熟な卵胞ができてしまうことを言います。
文字通り、
卵巣にたくさんの嚢胞ができる症状です。
卵巣内に多数の卵胞がたまり、
卵巣表面の膜が固くなり、排卵が阻害されます。
・生理不順
・月経異常
・体毛が濃くなる
などの症状は、PCOSの特徴(男性ホルモンの値が高くなる)です。
PCOSも、20〜30代の若い女性に増えています。
多嚢胞性卵巣症候群は、
インスリンホルモンの分泌と関係しているとも言われています。
血糖値の急上昇を防ぐ食事の取り方とも関係があると考えられます。
黄体機能不全とは
黄体機能不全は、
基礎体温表で高温期が短い場合に考えられます。
また、
ホルモン検査で黄体ホルモン(プロゲステロン)の濃度が低い場合に診断されます。
黄体機能不全は着床障害にも関係しています。
きちんと排卵されなければ、黄体ホルモンが分泌されません。
排卵障害があるために、
結果として黄体機能不全が起きます。
これまで、
・卵巣機能低下
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
・黄体機能不全
について紹介しました。
上記3つの他、
・高プロラクチン血症
・中枢性の排卵障害
について、以下に記します。
「高プロラクチン血症」及び「中枢性の排卵障害」とは
高プロラクチン血症とは
高プロラクチン血症とは、
「プロラクチン」という乳汁を分泌させる刺激ホルモンが血液中で異常に高くなり、
症状乳汁分泌や排卵障害などを起こしてしまう状態を言います。
乳首をつまんで乳汁が分泌される場合、
高プロラクチン血症と考えられます。
母乳をあげていると妊娠しにくいのは、まさにこの状態です。
中枢性の排卵障害とは
中枢性の排卵障害とは、
視床下部・下垂体性排卵障害を指します。
・不規則な生活やストレス
・極端なダイエット
・甲状腺機能低下症
などが原因です。
極端な体重減少により月経が止まっている場合は、生活習慣を見直し、元の体重に近づけ、月経が戻るのを待つことも重要です。
ただし、
あまりに長期に渡る際には、排卵誘発剤が必要な場合もあります。
『不妊の要因となる疾患』は、
20代から発症しているという事例も少なくありません。
月経不順や無月経など、
排卵障害が疑われる場合は、
排卵誘発剤などによる治療が必要なこともあります。
症状を明確にし、治療・改善することができれば、妊娠成立の確率は飛躍的に上がります。
事前に検査することも可能です。
早めの婦人科検診や病院受診をお勧めします。
以上、排卵因子として、
・卵巣機能低下
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
・黄体機能不全
・高プロラクチン血症
・中枢性の排卵障害
について紹介させていただきました。
あわせて、こちらの記事もご覧ください。